サンクコストの呪い

今回は、人の判断を鈍らせてしまう怖い“呪い”のお話です。

みなさんのまわりには、食べ放題の焼肉屋で「元を取るぞ!」と食べ過ぎて体調を壊してしまう人いませんか?  他にも、競馬やパチンコに熱中するあまり「負けを取り戻そう」と大金を使い果たす人。100円セールで食べきれないドーナツを買ってしまう人。これらは経済学的にみると「サンクコスト」という概念に縛られている状態、いわゆる“サンクコストの呪い”にかかってしまっている人たちです。

サンクコストとは「回収できないコスト」のことで、別名、「埋没費用」とも呼ばれます。

サンクコストの呪いは、かけた費用に見合う価値が回収できない状況にいながら、投資を続ければ回収できると錯覚してしまっている状態です。投資を続ければ、これまでの投資分が活かされるように感じますが、これは気分的な問題でこれまでかけてきた時間やお金はこの先、どんな意思決定をしたとしても変わりません。

経済学では、新しい判断をするとき「サンクコストは忘れて」考えます。過去にとらわれると合理的な判断ができなくなるからです。焼肉屋の例は、料金を支払った時点で、お金はサンクコストになるので忘れましょう。大切なのは、お店に入ってから「元を取ろう」と考えるのではなく、お店に入る前に「元を取れるかどうか」を考えることです。

しかし、世の中にはサンクコストの呪いにかかってしまい、「投資した分を取り戻したい」「自分の過ちを認めたくない」という心理が働き、無駄な投資を繰り返すケースがたくさんあります。

歯医者さんも例外ではありません。割引セールで使い切れない歯科材を仕入れる。許容範囲を超えた予約で治療に支障が出る。使い物にならない高額機材をいつまでも院内に置いておく。高額なセミナーで学んだスキルを無理やり実践する。なんてことはありませんか?

重要なのは、これまでかけてきた時間やお金、努力などに惑わされないこと。過去の投資よりも未来の見返りをきちんと見極めることです。

今回の知っておきたい

過去(これまでかけてきた時間やお金、努力など)にとらわれると、合理的な判断ができなくなる!