時は金なり(機会費用)


今回は「時は金なり」のお話。

たとえば、1時間テレビを観たとします。もし、その1時間を時給1,000 円のアルバイトに使っていたら、1,000 円のお金が手に入りました。つまり、1時間という時間を「テレビに費やす」か「アルバイトに費やす」かで得られる利益が変わるわけです。

経済学では、このように選択したことで得られなかった利益を『機会費用』と呼んでいます。

歯医者さんを例にすると、訪問診療に出かけた帰り道。医院まで「1時間で帰れるバス」と「10分で帰れるタクシー」のどちらかを利用するとします。バスの運賃が400円、タクシー代が2,000円としたら普通は“ タクシーのほうが割高” と感じるはずです。しかし経済学では、実際に支払った会計上の費用に、機会費用を足したものをコストとしています。

もしバスを選んだ場合、「運賃400円」と「タクシーを利用したときに得られた利益」がコストです。タクシーを利用したときに得られた利益とは、タクシーで早く医院に戻り、患者さんの診察で1万円の利益を得られるのであれば、その売上もコストに加えます(本人の休憩に当てれば、利益は0円です)。そうなると、バスを利用したときのコストは「運賃400円」と「得られたであろう売上1万円」となり、タクシーよりも割高になるというわけです。

また、機会費用は、お金以外に時間や価値、感情などもコストとします。「感情がコスト?」と驚くかもしれませんが、思い出がお金で買えないように、感情がお金を凌駕することもあるのです。

次の例を見てみましょう。
年収600万円のサラリーマンが、脱サラして年収400万円のカフェ店員に転職しました。転職後の機会費用は、サラリーマン時代の600万円となるので200万円の損です。しかし、いつかカフェのオーナーになりたいという夢があったため、年収ダウンを受入れ、本人は満足しています。つまり、サラリーマン時代の機会費用は600万円以上のコストとなり、カフェ店員に転職したほうがコストは安い、と経済学では考えます。

少し複雑ですが「できたはずの行動の中で“ 得られる満足や利益” がいちばん高いもの」を機会費用と考えてみてください。

転職例のように、お金以外をコストにすると具体的な数字で計算できないこともありますが、機会費用を考慮することで自分が本当に満足できる選択ができるようになります。

時は金なり。決断に迷ったときは、機会費用を考慮して「時間の削減」か「費用の節約」かを見極めてみてください。

今回の知っておきたい

機会費用とは、選択したことで “得られなかった 利益。お金だけでなく、時間、価値、感情も機会費用に含まれる!