売り上げUPは順序が大事! 新患獲得の前にやるべきことは『失患防止』対策です。これをキッチリやって十分な成果が出た後で、新規患者を獲得する、というのが正しい順序です。

売上アップは順番が大事! 新規患者を増やす前にやっておきたい“失患防止策”とは?

ある日の夕方、ハシモト院長はアポイント帳を眺めながら、いつになく苛立ちを感じていた。何故なら、この数週間、患者のアポイントがやや減少していることに不安を感じていたからだ。

この不安を紛らすために、院長はコンサルタントに電話をかけた。
「あ、もしもし和仁さん、来週の定例ミーティングはよろしくお願いします。ところで売 上アップについて悩んでいるのですが、この電話で少しアドバイスをお願いできないでしょうか」

コンサルタントは、少し考えた後、ゆっくりした口調でこう答えた。
「そうですね、私がこのまま相談に乗っても良いのですが、今回は売上に対する不安ということですから、売上アップに詳しいコンサルタントで村松達夫という友人がいますので、彼をご紹介しましょう。ハシモト歯科さんはパートナーズクラブのメンバーですので、彼に無料で電話相談できるサービスが、ちょうど明後日にあります。私から村松さんに事情を伝え、予約も入れておきますよ」

「それは有難うございます。ではよろしくお願いします」 院長は少しワクワク感を覚えつつ、受話器を置いた。

そして、電話相談日、院長は少し緊張を感じながら、指定された番号へ電話をかけた。
「もしもし、私、ハシモト歯科のハシモトと申しますが、和仁さんから……」

全部言い終わらないうちに、受話器の向こうから落ち着いた声が聞こえてきた。
「こんにちは、村松です。ハシモト院長ですね。お待ちしておりました。和仁さんから話は聞いています。売上に不安を感じている、ということでしたね」

「ええ、アポイントが減って、何から手をつけてよいのか分からなくて、最近、気持ち も落ち着かないのですよ」

「お気持ちお察しします。何から取り組んでよいのか、方向が見えないのは真っ暗なトンネルにいるようで、ご不安ですよね。せっかくの時間ですから、出口が見えるよう、サポートさせて頂きます。さて、売上アップですが、院長はまずは何をやればよいと思いますか?」

院長は悩みながら、こう答えた。「そうですね、患者が減っているのだから、新規患者を獲得するために、ホームページを立ち上げるか……でしょうか?」

村松は少し微笑んだ様子で「ふふ、ほとんどの方がそうおっしゃいますね。しかし、実はそれは大きな間違いなのです。何故ならご承知のとおり、歯科医院というのは、地域密着型です。そして、患者さんのリピートも可能です。こうしたビジネスは新規を獲得する前にやるべきことがあるのです。それは『失患防止』です。これをキッチリやって十分な成果が出た後で、新規患者を獲得する、というのが正しい順序なのです」

「確かに『失患防止』は重要ですね。でも新規を獲得するのはその後、というのがよく分かりません。先にやっても別に良いので
はないでしょうか」

「では少したとえ話をしましょう。ここにバケツがあるとします。このバケツに水を入れるのですが、実は穴が開いています。その場合、バケツに水を溜めるにはどうしたらよいでしょう?」

「それは簡単です。バケツの穴を塞ぐ、です。それが一番手っ取り早いですよ」

「そうですよね。では、このバケツが医院、水が患者さんだと考えたらどうなります?」

「あ……」
ハシモト院長はハッと気づいた。

「どうやらお気づきのようですね。そう、新しい患者さんを増やすよりも失患を減らす方が先なのです。まして、地域密着なわけですから、患者さんを無限に増やすことはできませんからね」

「なるほど、良く分かりました。バケツの穴を塞ぐ、つまり『失患防止』が先なのですね。具体的には何をしたらよいのでしょう?」

メンタル面と行動面の2つの側面から、ケアを行うことが大切です。まずメンタル面では、患者さんが何か言いたそうな顔をしていたら、こちらから、すかさず『どうしました?』と声をかけてあげることです。そうすることで不満の芽を取り除くことができます」

「なるほど、言われてみれば、患者さんが何も言わないのでついスルーしたら、その後、来なくなってしまったことがありました。あれは不満の種だったのですね」

「そうです。明らかな不満は表に出ますから分かりやすいのですが、こうした小さな不満は声にならず、知らず知らずのうちに医院を蝕んでいくのです」

「なんだか、虫歯のようで怖いですね。もう1つの行動面は何をするのでしょう?」

「これは次回のアポイントをキッチリ取っておくことです」

「でも患者さんに、そんな先の予定は分からない、と言われたら、ではまたご連絡ください、とはなりませんか? リコールハガキも送っていますし……」

「アポイントを取っておかなければ、そのままどんどん月日が経って行きづらくなります。そんな時にリコールハガキが来ても、責められているように感じるだけです。そこで、後から変更しても構わない、という条件で次回の約束をとっておくのです。そうすれば、もし、その日が都合が悪くなっても、たいていの人は別の日に変更してもらえませんか、と連絡してくるでしょう」

「患者さんが来やすくなるようにこちらがお膳立てしてあげることが大切なのですね」

「まずはこの2点を強化することで、『失患防止率』は高まることでしょう。来週、和仁さんとの定例ミーティングとのことですので、私のほうからはこれくらいにしておきましょう。来週までに再整理しておかれると良いと思いますよ」

「そうですね、分かりました」ハシモト院長はまさに 暗闇からパッと光が差したような錯覚を覚えながら、明るい表情で受話器を置いた。来週のミーティングを楽しみに思いつつ。

今回のレッスン

新規患者を獲得する前にやっておきたい「失患防止策」は……

メンタル面
患者さんの何か言いたそうな表情を見逃さず、すかさず「何か気になることがありますでしょうか」と尋ね、すっきり解決させる。

行動面
リコールハガキに頼るのではなく、「仮予約」でよいので、次回のアポイントを取っておくこと。