同じ注意を何回しても、ぜんぜん変わらないスタッフがいた場合、どのように注意しますか? いくら言葉だけで訴えても、人は理屈だけでは動かない生き物です。さて、どうしますか?

人は理屈だけでは動かない? イメージ力がない人には、現場を見せる。

「同じ注意を何回しても、全然変わらないスタッフがいます。どう言えばいいのでしょうか?」という相談を受付担当のAさんから受けました。

詳しく話を聞くと、事務手続き上スタッフが毎月提出するデータがあるのですが、Bさんが必ず遅れて提出し、しかも毎回どこか不備があって提出し直しになるとのこと。
それが毎回続くので、はじめのうちは注意をしていたのですが、何度も同じ注意をするうちに、「毎日顔をあわせるし、口うるさいみたいに思われたくない」という気持ちも働き、放っておくようになりました。しかし当然そのままでよいわけもなく、院長からも「あの資料はどうなっているの?」と尋ねられ、上下にサンドイッチされたような苦しい状況になっていました。

わたしは彼女に尋ねました。「その提出が遅れたり不備があると、具体的にどう困るんですか?」
「集計が二度手間になるので、1日で終わる仕事が、2日、3日と余計にかかってきます。
それに毎度のことなので、正直いって気分が悪くなります」
「では、あなたがそういう迷惑を受けていることを、Bさんは知っていますか?」
「うーん、何度も注意をしているから、子供じゃないし、わかると思うんですけど……」

ある日の院内ミーティングで、お互いに日頃どういう仕事をどんな工夫をしてやっているか、プレゼンしあうワークをやりました。そのとき、Aさんは毎月のデータ提出をどう処理して、それがどう医院経営に活かされているのかを、実際の書類やパソコン画面を見せながら、わかりやすくプレゼンしました。さらに、そのデータ提出が遅れると、どういう困ったことが起こるのか、も。すると、その月からBさんは提出の遅延がなくなったそうです。きっと「ルールを守らない行為 」がどう仲間や医院に迷惑をかけていたか、を心で納得したからでしょう。

いくら言葉だけでコンコンと訴えても、人は理屈だけでは動かない場合があります。なぜなら、イメージ力のない人が頭で記憶したことは忘れ去られるからです。ちなみに、夫婦喧嘩の原因(言った、言わないの言い争い)の大半はここにありますね。
ところが、人は現場を目で見ると、強烈に印象に残り、心で記憶します。心で記憶したことは忘れません。したがって深く納得するので、行動が変わるわけです。言ってわからなければ、現場を見せましょう。

今回のレッスン

人は、強烈に印象に残る出来事を心で記憶します。心で記憶したことは忘れることがなく、深く納得するので、行動が変わります。言ってわからない人には、リアルな現場を見せましょう。