「君に任せた!」と言ったものの、スタッフに指示を出して出来上がった取り組み内容が期待したレベルに達していなかった場合、あなたはどのように口を出しますか?

スタッフに仕事を任せる時は、「任せる」と「口を出す」の境目を決めておく。

ある歯科医院の院長から、こんな相談を受けました。
「スタッフの衛生士にPMTCのプログラムをつくるよう指示を出したのですが、出てきた内容が期待したレベルに達していなかったので、ああしたら、こうしたらと口を出したんです。

すると、露骨に嫌な顔をするんですよ。言葉には出さないけど、『ここは歯科衛生士のわたしの領域で、自分なりに考えがあるのだから、ドクターが入ってこないで』という感じで。たしかにわたしも『君に任せたから』と言ってある以上、あまり口出ししたくはないのですが……。
こういう場合、どうしたらいいのでしょうか?」

たしかに、その領域について自分が専門ではない場合、口の出し方って難しいですよね。しかし、仕事としてやっている以上、サービスレベルが低いまま患者さんに提供するわけにもいきません。こんなとき、どう すればいいのでしょうか?

そこで院長に、具体的にそのスタッフの仕事のどこに不満があるのか、を尋ねてみました。すると「エビデンスの調べ方が浅い」「そもそも納期設定がいい加減で、本当なら先月には完成しているはずがまだできていない」「途中段階での報告もない」などの不満が出てきました。

つまり院長は「PMTCのプログラム内容」以前に、彼女の「仕事の仕方」に対して不満があり、口を出したいわけです。
たしかにその院長は社会人経験もビジネスパーソンとしての技術も、その衛生士より格段に上なので、未熟な点がいくらでも目につきます。そこでわたしは院長に、こんな提案をしました。

「仕事を依頼する段階で、『院長が口を出す領域』と『基本的 には口を出さずに任せる領域』を前もって明快に伝えてはどうでしょうか? つまり今回のケースでは、PMTCの内容 =『基本的には口を出さずに任せる領域』クオリティの高い仕事の進め方=『院長が口を出す領域』というように。
そこがお互いの中でゴチャ混ぜになっているところに、ストレスの原因があるのではないでしょうか」

院長はその点をさっそく衛生士に伝えて仕切り直しをしたところ、お互いの役割に納得でき、建設的に仕事が進むようになったようです。「任せる」と「口を出す」の境目、デリケートですね。

今回のレッスン

仕事を依頼する段階で、『院長が口を出す領域』と『口を出さずに任せる領域』を、相手に前もって明快に伝えよう。