多くの歯科医師が「良い治療を提供すれば患者さんは集まる」と考えます。
しかし、昨今の激しい競争環境において、医院を存続させ、地域医療を支え続けるためには、医療技術と同じくらい「経営」という土台が重要です。
本記事では、過去の事業失敗から学んだ「数字」の重要性を軸に、歯科開業前に必ず押さえておくべき経営のリアルな視点を解説します。
技術と経営。これらが一体となって初めて、理想の歯科医療を形にすることができます。

目次
1)なぜ歯科医師に「経営視点」が必要なのか
2)失敗から学んだ「技術×経営」の需要性
3)開業前に分析すべき3つの重要項目
4)医療の質を高めるための「バックオフィス」構築
1)なぜ歯科医師に「経営視点」が必要なのか
歯科医師としての専門技術が高いことは言うまでもありません。しかし、地域医療を本当に守り、患者さんに必要とされ続ける医院をつくるためには、診療技術だけでなく経営の視点が不可欠です。
昨今の歯科業界は、コンビニより医院数が多いとも言われるほど競争が激しく、立地や患者層、診療科目の違いによって経営は大きく変わります。ここで言う「経営」とは難しい経済学ではなく、医院が患者さんに選ばれ続けるための仕組みづくりなのです。
2)失敗から学んだ「技術×経営」の重要性
私は以前、飲食事業を立ち上げた際、技術と情熱さえあれば成功すると高をくくっていました。しかし、材料費や人件費といった「数字」を軽視した結果、赤字が続くという苦い経験をしました。この失敗から確信したのは、成功する開業とは「技術 × 経営」の掛け合わせであるということです。
歯科医師だからこそ見落としがちな経営の視点は、実は医院の存続、ひいては患者さんの健康を守ることと密接につながっています。
数値に落とすことで見えてくるもの
感覚や経験だけではなく、数値に落とし込むことで、次のようなことが見えてきます。
•必要な月間最低患者数
•収益が出る診療単価
•コスト削減ポイント
例えば、月の固定費が明確になれば、どの水準の売上を目指すべきか自ずと見えてきます。これは開業前に知っておくべき最も重要な情報のひとつです。
数値をリアルに理解するコツは、「身近な数字」に落とし込むこと。
これまで新規開業のご相談を多く受けてきましたが、「年間売上〇千万円」「借入金〇千万円」といった大きな数字だけを見ても、実感が湧かない方がほとんどです。
ところがそれを、「1日あたり何人の来院が必要か」「毎月いくら返済するのか」といった日常の数字に分解すると、一気に現実味が増します。
経営を考えるうえで大切なのは、難しい数字ではなく、毎日の診療と結びつく数字で考えることです。
3)開業前に分析すべき3つの重要項目
経営を始める前に、以下の3つのポイントを数字で捉える必要があります。
- 立地と患者ニーズの合致
人口動態や競合数、アクセスなどを分析し、ターゲット患者像とコンセプトを一致させます。 - 資金繰りのタイムラグ対策
多額の初期費用に加え、保険診療の入金タイミング(キャッシュフロー)を理解した運転資金の確保が必須です。 - 専門家・成功事例の活用
独力での情報収集には限界があります。歯科コンサルタントや実際の開業医の成功・失敗事例から「生の数字」を学ぶことは、大きな価値になります。
4)医療の質を高めるための「バックオフィス」構築
歯科医として治療に全力を注ぐためには、あえて「経営の最低限」を仕組み化し、事務作業の負担を減らす必要があります。
•数値による見える化: 月間最低患者数、診療単価、固定費の管理
•環境の整備: 会計ソフトや予約システムの分析機能を使い、KPI(主要指標)を日常的に把握できる仕組みを作ります。
*数字を取れる環境を作る
経営では数値で判断することが重要ですが、その前提として「数値化」できていなければ始まりません。実際、最初から数字を取っていないと、途中から管理しようとしても過去との比較ができず非常に大変です。開業当初から、売上・患者数などさまざまんな数値をとれる環境を作ることが、後々の的確な経営判断を支えます。
•会計ソフト連携
•予約システムの分析機能
•KPI(主要業績評価指標)の設定
こうした仕組みがあると、「経営」は難しいものではなく、日々の治療と同じように取り組むべき課題と改善点が明確なプロセスになります。
あなたの未来と地域医療を守る第一歩
地域医療を守り続けるためには、経営の視点・数字・準備が成功の鍵です。まずは、あなたの開業計画を数字で「見える化」してみてください。
「知らなくて損をした」ではなく、「知っていて良かった」と思える準備をすることが、あなたと地域の患者さんの未来を守る第一歩となります。
今回のレッスン
歯科開業前に必ず知っておきたい「経営と数字の考え方」をお伝えしました。地域医療を守るには、想いだけでなく現実的な経営設計が不可欠です。大きな数字を1日・1か月の身近な数値に落とし込み、医療に集中できる環境を整えることが、失敗しない開業への第一歩になります。
老子 水木
おいご みずき
SOILS代表
事業失敗をきっかけに、中小企業の「お金の悩み」と「ビジョン実現」に向き合うパートナー型コンサルタントとして経営力向上を支援。大手流通企業(CCC)や外資証券会社(クレディ・スイス証券、モルガン・スタンレー)で勤務し、中小企業士診断士として独立。神奈川県在住、3児の父。趣味はサーフィン。
ホームページ
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